西沢千晶 - エッセイ
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| 私はワサビが苦手だ。 蕎麦は大好きだし、刺身も寿司も好きなのだが、ワサビはどうしてもダメなのである。 蕎麦や刺身の場合は、自分が使わなければいいのだが、寿司の場合は、はじめから入っているので、どうしても寿司は敬遠しがちになってしまう。 カウンターでアラカルトで頼むような店ならば、「サビ抜きで」とも言えるのだが、回転寿司ではそうもいかないし、招かれた先などで寿司の出前を取って出された場合などは少々困る。 ワサビが入っていても食べられないわけではないので、なんとかなるが、それではせっかくの好意に対して申し訳ないので、聞かれれば、「寿司はあまり得意ではない」と答えることにしている。 ワサビほどではないが、カラシもあまり得意ではない。ホットドッグに入っている程度なら構わないが、自分で付けるようになっていれば付けないで食べる。 どうも、私は苦系や辛系の調味料は合わないようなのである。 しかし、反対に、コショウ、特にブラックペッパーなどは好きで、私がスープやパスタなどを作るとどうしても入れすぎてしまうようで、「おいしいけどちょっと辛い」と言われることもしばしばなので気をつけるようにしている。 唐辛子系の辛さも、特に好きでもないが、食べられないというようなことはない。 ワサビなどの辛味調味料が嫌いといっても、食材の好き嫌いではないし、付き合いの席などで、特に困ることはないのだが、なぜワサビが苦手なのか考えてみた。 そこで、気づいたというか思い出したことがある。 私が3〜4歳の頃、両親に連れられて蕎麦屋に行ったときのことである。 お腹を空かせていた私は、蕎麦屋でまず先に出されたワサビやネギの入った薬味の小皿を見て、空腹とワサビの鮮やかな色に惹かれたためか、薬味の小皿に手を伸ばすと、両親が止める間もなくワサビを手に取り口へ入れてしまったのである。 大人でも、多量のワサビを口に入れれば涙を流すだろうが、当時の私は3歳か4歳である。 あまりの苦さと辛さに、顔を歪めて泣き出したのである。 しかし、すでにワサビを口に入れて飲み込んでしまっていたので、吐き出すわけにもいかず、その強烈な味から逃れることはできなかったのである。 想像してほしい。3〜4歳の子供が、蕎麦の薬味のワサビを一口で食べたのである。 今にして思えば、そのときの恐怖心と、「マズイ!!!」という思いがトラウマとなって、いまだにあの味に馴染めないのではないだろうか。 この「ワサビ事件」は、後に両親から聞かされた話で、私に当時の記憶はない。 しかし、今もワサビが食べられないということが、幼い日の恐ろしい記憶が私の中に残っていることの現われではないかと思っている。 〆ワサビ 〆ハミガキ 〆左利き 〆ジンジャーエール 〆紅茶の不思議 〆音楽と信仰 |
